芸能パロ/颯人




******


幾つものライトに照らされ、ふわふわと踊る月光色の髪は普段よりも煌めいている。
少し掠れた、高めの甘い声は柔らかなギターに乗せてゆったりと響き、一番明るい晴天の色をした瞳はどこまでも優しい光を湛えていて。
味気無いテレビ画面の此方側の少女達を虜にしている、人気沸騰中の歌手。テレビのチャンネルをなんとはなしに切り替えながら眺めていたら件の歌手の出演した歌番組をやっていたので、黒鋼はそれをぼんやりと見ているのだった。


「黒たーん、ご飯できたよー」


微妙に気の抜けた声がキッチンから聞こえてくる。よっこらせ、胸中で年寄り染みた事を呟きながら立ち上がると、ミトンを填めた両手にグラタン皿を持ったファイが姿を見せた。
美味しそうな熱々のグラタンをダイニングテーブルに置いたファイは、ミトンを外しながらテレビへと視線を向ける。そこではまだ彼が歌っていて、ファイは揶揄うように片眉を引き上げると黒鋼を見た。


「黒りん、そんなにオレのこと好きー?」
「はぁ?何言ってんだ」


始まった。黒鋼は、このチャンネルをつけてしまった数分前の自分に深く溜息を吐いた。こうなることは目に見えていたのに、それを失念していた黒鋼のミスだ。
にやにやと口角を釣り上げたファイは、つんつんと黒鋼の腕を細くてしろい指先でつつきながら黒鋼を見上げる。


「だってー、オレのこと毎日生で見てるのにー、テレビに出てるオレのことも気になっちゃうんでしょー?」
「違う、たまたまだ。曲解するな」
「えー、黒たんのけちんぼー」
「誰がケチだ!」


スポットライトを浴びて輝く彼の髪がどの光よりもうつくしくて、つい見惚れてしまうのだ…など。口が裂けても言えそうに無い。




ハニーシロップに抱擁
(中毒性ばかり強くて、まったく。)



******